電力系統の需給調整における電気自動車急速充電需要の活用


近年,地球温暖化対策として太陽光発電(PV)や蓄電池式電気自動車(BEV)の普及が進んでいますが,PVは天候などの自然条件により発電量が変動するため,PV大規模導入により電力系統の需給バランスを維持する“系統調整力”が不足する恐れがあります。

そこで本研究ではBEV急速充電に着目し,ユーザーのBEV急速充電のタイミングを誘導することで電力系統へ系統調整力を提供することを提案し,そのポテンシャル推計を行っています。急速充電器利用の際の料金を電力系統の状況に応じて変化させ,経済的インセンティブを付与することで,ユーザーに行動変容を促すことを考えています。

これまで,ユーザーの利便性を考慮した急速充電需要曲線推計モデルを構築し,実際の走行データを用いた数値シミュレーションにより急速充電需要曲線を推計しました(図1)。さらに,インセンティブ付与の有無による急速充電需要曲線の差から提供調整力を推計しました。その結果,図2に示すようにBEV急速充電から提供調整力が得られることが示されました。また,特に休日日中や平日日没以降は提供調整力として有効ですが,平日日中はより大きなインセンティブ付与や勤務先の充電設備拡充が必要となります。今後はより多くのケーススタディを行い,BEV急速充電の活用可能性を詳細に分析していく予定です。

図1 急速充電需要曲線の例
図2 BEV急速充電による調整力提供可能性